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2021年6月10日
生産者

織座農園「有機的な農業実践とはまさにこれ!」

“有機つながり給食”と銘うった、有機野菜100%の給食

2021年4月、長野県南佐久郡佐久穂町にある「認定こども園ちいろばの杜」にて、“有機つながり給食”と銘うった、有機野菜100%の給食がスタートした。その立役者となっているのが、今回レポートする織座農園・窪川典子さんだ。認定こども園になる前身の「森のようちえんちいろば」を佐久穂町に誘致し、園児4人だった開園当時から、一緒に森で遊んだり、農作業のプログラム環境を整えたり、ちいろばを支えてきた。
36年前にパートナーと佐久穂町に移住する以前は、教師だったこともあり、織座農園の有機農業の世界には、“野菜とともに人を育む”という要素が含まれている。「織座に行けば必ず誰かとの出会いがある…」と周囲に認識されているほど、いろいろな人が行き交い(年間のべ1000人くらいの来客がある)、情報も集まり、典子さんとの対話の中で編集&実践されていることで農園の運営を豊かにしている。

心に染み渡るような野菜の美味しさ

そうしてたくさんの仲間たちによって育まれた農園の土は、まさに多様性の塊、特別甘かったり、特別栄養価が高いお野菜かどうかは研究機関しか知る由もないのだろうけど、「あぁ~織座の野菜はなんて美味しいんだろう」と多くの人の心を“染み渡るような美味しさ”の魅力で虜にしている。

織座の経営の柱となっている“提携”という販売形態

提携とは
1970年代、第一次有機農業運動の際に広まった『30人~40人の消費者で一件の有機農家を食べ支えよう』という活動。旬の有機野菜を確実に手に入れられるメリットと豊作or不作の波を受け止めなければならないデメリットを内包しているが、それを生産者と消費者の対話&人材交流で乗り越えていく活動。

30年以上、毎週毎週、織座の野菜を食べ続けている80代の消費者からは「織座の野菜を食べ続けてきたから、どこも悪いところがなくて健康よ!」と嬉しい報告をいただくことも。幼児年齢の子どもたちが、毎日給食で織座農園の野菜を食べ続けてどんな成長を見せてくれるか、この現代社会において希少な存在となるであろう、より多様な腸内細菌をベースとした健康体を獲得した子どもたちがどんな活躍をみせてくれるのか大変興味深いところですが、それはまた別の機会にレポートしたいと思います。

30年以上の有機農業実践の積み重ね

織座農園のもう一つの特徴は、標高1,000m以上の高地農園で夏場でも冷涼な気候の中、非常に肥沃な土壌で作物を作っている点。「有機農業を始めて30年目でようやくほうれん草が育つ土になったの!」と語られるほど、もともと雑草も生えなかったという土地で、30年以上の有機農業実践の積み重ねが、作物を豊かに育む土壌を生み出してきたのだ。冬季は-20度になることもある、厳しくも美しい高原農地で育った野菜たちは本当に魅力的な姿と色合いをしている。肥料として活用している鶏糞は、国産飼料と遺伝子組み換えでない輸入肥料にこだわった平飼い養鶏をしている仲間の農家から定期的にもらっているものを、落ち葉堆肥と混ぜ合わせたものを少量使っている(野菜たちの色が黄緑色で美しく、肥料過多になっていないことがわかる)。

農園内に湧き出る魔法の水と呼ばれる湧水

また農園内に湧きでる湧水は、“魔法の水”と言われるほど、美味しくて野菜ばかりでなく、動物たちの傷を癒したり、周辺に住む人たちも汲みに来るほどの良質なもの。苗の水やりに塩素の入った水ではなく、美味しい本物の天然水を与え続けられる環境も野菜を健康で美味しくしている要因の一つ。

有機的なつながり~認め合い・支え合い・分かち合い~

以上、織座農園の有機農業の特徴を一つ、二つと上げてみたが、“有機的なつながり(認め合い、支え合い、分かち合い)”というものを大切に育んできた結果、土壌微生物たちを基盤とした畑(自然界)と人の育ちあいを基盤とした織座農園(人間界)の実践がリンクして現実のものとなってきていることに気づかされる。有機マーク云々に振り回されるのではなく、ちゃんと自分でつながることが大切だよ、“有機的な農業実践とはまさにこれ!”といわんばかりの野菜たちの美味しさをぜひともより多くの皆さんに体験していただけたら幸いです。

オーガニック野菜専門店BIOSK 店主 櫻井正喜

【プロフィール】
1978年8月20日生まれ
東京農工大学大学院農学研究科卒

NPO法人文化学習共同ネットワークにて、不登校や引きこもりの青年たちの就労支援を目的としたパン屋「風のすみか」の立ち上げ生産農場の農園長として従事。
その後、有機農業のより高度な技術習得のために渡独。
ドイツの旧首都ボン近郊の田舎町で、BIOHOTEL(オーガニック認証を受けたホテル)の農場管理の仕事に従事する。また仕事を通じて、ヨーロッパ各地の“オーガニックの気軽さ日常感、楽しみ方”に大いに感化される。帰国後、群馬県高崎市にて就農。2012年6月「オーガニックを日常に。もっと気楽に楽しめる機会を提供する」ことをコンセプトにオーガニック野菜専門店BIOSK(※BIO<オーガニック>+KIOSK<小さな商店>)を立ち上げる。

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