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2021年9月22日
生産者

小木特産品開発センター「大切な人を思うからこそ、無農薬で育てたい」

佐渡の小木港から車で約3分ほどの立地にある小木特産品開発センター。中に入ると、地元で生産された野菜やくだもの、日本海で獲れたばかりの魚介類が並び、新鮮な食材を求めて多くの地元の方でにぎわっています。小木といえば「黒イチジク(ビオレ・ソリエス)」が「小木ビオレー」という名称でブランド化されており、シェフにも人気の食材です。県外からも「佐渡ならでは・小木ならでは」の食材を求めて問い合わせが来る小木特産品開発センターにて、小木地区の農産物のこと、そして開発センターのことを理事長の榎谷さんに伺いました。

大切な人を思うからこそ、無農薬

フレマル
(安達)

まず最初に小木特産品開発センター集まってくる食材は、どんなものがありますでしょうか?インターネットで情報を調べると、無農薬の野菜が多いという情報がありましたが…

小木特産品開発センター小木特産品開発
センター

そうですね。生産数も少ないし、体に気を使っている人や孫に食べさせたいと思っている方が作っているので、無農薬栽培が多いです。たい肥(肥料)をたくさん使う方が多いので、私たちはトン袋と言っているんですが、1トン入るサイズの袋にたい肥を入れて、春と秋に生産者に1日がかりで配達しています。

フレマル
(安達)

1トン!すごい量ですね。農薬をまかずに質のいい肥料をあげて、お孫さんや自分たちが食べるものを安心安全にしたいということですね。
集まってくる食材の栽培履歴は、どのようにお知らせしているのでしょうか?

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地元の方へは口頭でお伝えしていますし、飲食店からの注文には履歴書をつけてお知らせしています。

遠くてもわざわざ買いに行きたくなる、湧き水と肥沃な土で育った小木の農産物の魅力と人気の黒イチジク

フレマル
(安達)

小木地区の農業にはどんな特徴がありますでしょうか?

小木特産品開発センター小木特産品開発
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半島なので水がないけど土目(土壌の性質)が良いので、昔から畑作が一般です。主に大根やサツマイモ、じゃがいもを栽培しています。でも、休耕田では排水ができないからごぼうの栽培はできないし、連作がちょっと厳しいですね。
それでも「小木の野菜がうまい」と、国仲(くになか/佐渡市の中央部の市街地)から来てくれる方が多いです。

フレマル
(安達)

さきほど、小木地域は「水がない」とうかがいましたが、水はどこから引いているのでしょうか。

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小木地区には自由に使える湧き水が2~3箇所あって、それを田んぼに使っています。
昔、弘法大師という偉いお坊さんが水を出したと言われている法浄場(ほうじょば)という場所や、あとは強清水(こわしみず)にもあるかな。そこは今でも、水道の水源にしています。大浦という地域にもあって、いも類は10℃以下になると腐ってしまうんですが、大浦の湧き水は保温が出来るので、ハウス栽培にも利用されています。

フレマル
(安達)

豊かな土と湧き水で育った食材とは、とても魅力的ですよね!では小木地区で、特に人気があってこれは貴重!という食材を教えていただけますでしょうか?

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さつまいもや最近だとレモン、みかん、キウイフルーツなどのくだものかな。あとは、あまり知られていないと思うけど、”わにかずら”という海藻ですね。

フレマル
(安達)

くだものから海藻類まで種類が豊富ですね。くだものといえば、問い合わせが多い【ビオレ・ソリエス(黒イチジク/小木ビオレー)】というくだものについて教えていただけますでしょうか?

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ビオレ・ソリエス(黒イチジク)は、一般的ないちじくと比べて黒くて甘みが強いうえに柔らかいので、生で皮ごと食べるのがおすすめですね。
当初は農協にビオレ・ソリエス(黒イチジク)を栽培する、と話した時に「難しいからやめておいた方がいい」と止められました。研修でうかがった佐賀県の農家さんもそうなのですが、ビオレ・ソリエス(黒イチジク)は個人で生産している方が多く、全国でも組合を作っているのは小木地区しかないと聞いています。

フレマル
(安達)

やめた方がいいとまでと言われていた難易度の高い品種が、今では全国から問い合わせが来ているところまで研鑽されたのですね!小木地区の生産者の皆さんの粘り強さに、頭が下がる思いです。さて、先ほどレモンがおすすめ食材の一つにあがっていましたが、レモンも無農薬栽培が多いそうですね。無農薬のレモン栽培って難しいのではないですか?

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ほとんどが無農薬です。農薬で予防しなくても大丈夫なんですよ。菌もないし結構育つので。ミカンなどもそうですね。量を作ると予防などが必要になりますが、自分達が食べる少量を作っているから、みんな農薬は気にかけてるみたいです。最近、レモンは琴浦などでも栽培されていますね。

フレマル
(安達)

なるほど、少量だからこそ無農薬栽培ができるということですね。減農薬や無農薬で育てている生産者のこだわりは、どこにあると思いますか?

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先ほども触れましたが、子供や孫に食べさせたいし自分も身体にいいものを食べたい、という想いじゃないかと。まったく使わないというわけではなく、虫が出ると苗が小さいうちに1回だけ薬をまくことはあります。でも、なるべく薬は使わない。安心を優先したい、と思っているので。
じゃがいもなんて、無農薬のものは食べると分かるみたいですよ。毎年、収穫時期の6月終わり~7月になると、決まった方がインターネットで注文してくれます。

東京にも出荷。少しずつ広まっている小木のさつまいもと「いももち」

フレマル
(安達)

さつまいものお話も伺いたいのですが、小木地区はさつまいもの栽培が盛んですよね。やはり、さつまいもも無農薬なのでしょうか?

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そうです、無農薬です。土目もいいし、みなさん作るのが上手なんです。

フレマル
(安達)

小木地区でさつまいもの栽培が盛んになった理由はありますでしょうか?

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昔はもともと台地で水が無かったし、川も小さかったからだと思います。冬になれば、さつまいもで「いももち」を作って食べたり、人にあげたりしていました。苗づくりも上手かったので、苗もつくりにもいち早く取り組む農家もいました。
以前は6月ごろに植えていましたが、8月のお盆あたりから売りたい人は佐和田地区の祭りやホームセンターで苗が売られていたら購入して、出荷する時期を考えて早めに栽培している農家さんもいらっしゃいます。もちろん、早い農家さんばかりではありませんが。
サイズは少し前からストーブで焼くのに適している、細くて小さいものが好まれます。大きいサイズだと、特産品センターで「いももち」や干し芋に加工して販売していますね。

フレマル
(安達)

いももちは昔から小木地区で食べられてきたのでしょうか?

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はい。子供の時からありました。以前、町おこしでいももちを販売してみたけど、うまくいかなかったんですが、今は上越や東京などに出して、少しずつですが広まっています。認知度はまだまだですが、周りに教わりながら知ってもらえればいいなと思っています。

フレマル
(安達)

コロナ禍で観光客が減ったことで、お土産品としての「いももち」の販売に苦慮されたとうかがいました。でも、若い方の発信がきっかけで、いももちが売れていったのですよね!

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はい。観光客が減って、在庫のいももちの賞味期限が迫り悩んでいたところ、若者のSNSでの発信がきっかけで、注目していただきました。情報を伝えるって、大事なことですよね。

佐渡のさざえは送料がかかっていても安い

フレマル
(安達)

フレマルでも、佐渡そして小木の新鮮な食材を、全国のシェフの皆さんにアピールするお手伝いができると嬉しいです。
食材を販売している中で「嬉しいなぁ」っていう瞬間は、どういう時でしょうか?

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お客様や地域の方に「ここの物は良いし、安い」とお店に立ち寄ってもらえることですね。立ち寄ってくれたお客様と、そのシーズンに応じた話をしています。わかめはいつ頃?とか。たくあんのつけものは、まだできないの?とか。そんな質問がありますね。

フレマル
(安達)

地域の人たちとのコミュニケーションも、楽しみの一つですね。

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そうですね。去年も開催した「扇の市」では、寄りたい、集まりたい、何か珍しいものを食べたいといった方が多くいらっしゃってくれました。当日そばを販売したら結構売れて、忙しくて作るのにあたふたしていました。
でも、今年も地元の祭りがいくつか中止になったのは、残念ですね。

フレマル
(安達)

コロナウイルスの影響で観光客も激減していると思いますが、地元の方だけではなく、島外の方や業者様が食材を求めて、こちらまでいらっしゃったことがあるとうかがいました。

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はい、食材を見に来られたことがあります。
後日要望があれば、こちらでこんな食材がある、キウイはどうですか?めかぶはどうですか?と旬の食材をおすすめします。希望の食材があれば「欲しいです」と返事がありますので。
今年はレモンやキウイ、みかん、わかめなど、いろいろおすすめしました。
個人の方だと、毎年、長野県からいらっしゃる方がいます。送って欲しいと夏にさざえを見に来ます。釣りが好きな方だからクーラーボックス持って「また来たよ」って。

フレマル
(安達)

毎年来てくれると、親交も深まっていいですね。地域の人たち以外の業者や個人の方から佐渡の食材が欲しいと言われることについては、どう思いますでしょうか?

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すごいと思う。特にビオレ・ソリエス(黒イチジク)はすごいです。自分たちが対応できない!と思うくらい。小木といえば大体こちらに来てくれますし。
あとは、東京の小さいお店から干し柿の注文がありました。干し柿にもいろんなタイプがあるから、中がやわらかいものがいいなどの希望があったりします。

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(安達)

東京に干し柿ですか!

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これからまだまだ出ます。あんぽ柿もシーズンの時には出ますね。

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(安達)

今まで東京以外の地域に、どんな食材を発送したか教えていただけますでしょうか?

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北海道から九州までいろんな食材を発送しています。地元の方が北海道方面に親戚が多いので、北海道へ発送することが多いですね。いちじくや柿、それと魚類とか。「剥きさざえ」は、安くておいしいといった声をいただきます。
静岡県の飲食店へ、活きさざえを10kg発送したこともあります。静岡県の方にしたら、佐渡のさざえは送料がかかっていても安いみたいだから、あちらは値が張るんだろうな、と。

フレマル
(安達)

やっぱり、地元の方から見ても佐渡小木の特産品、野菜や魚、果物はおいしいと思いますでしょうか?

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おいしい。地元の人はうまいものしか食べないから、一番贅沢ですね。漁師さんを見ているとそう思います。一番いい、朝採れの食材を食べていますから。

佐渡には、はじめて耳にする食材が多い

フレマル
(安達)

今の商売を始めてから現在までで、一番嬉しかったことを教えていただけますでしょうか?

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そうですね、年齢の若い会員が増えてくれたことですね。若いといっても60~70代ですが。

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(安達)

会員ですか?

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はい、特産品のふれあい市の会員ですね。栽培履歴や無農薬履歴の協定を締結した会員で、特産品を持ち上げてくれる人、応援してくれる人、そういう位置づけで入ってもらいます。会員数はざっとで40人くらいで熟練者が多くて、68歳から中には90歳になる人もいらっしゃいます。

フレマル
(安達)

なるほど。たくさんの生産者たちが、小木特産品開発センターを支えているんですね。

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はい。今年は判のり作りの人が入ってくれました。何年前から注文はあったんですが、作る人が少ないんです。手間がかかるから、知り合いに譲る分だけ。干すものなかなか大変ですし。判のりに関しては、生産者を掘り起こした気がしますね。

フレマル
(安達)

自分が獲った魚を買いに来たお客様からの言葉で、印象的な言葉はありましたでしょうか?

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そうですね、まず活きがいい。ここの魚は内臓の処理もしてあるし、冷凍庫に入れておけばいつでも使える。その点がありがたいと。ヤリイカは味が落ちないから、1年くらい冷凍しても大丈夫です。
あとは、子持ちが欲しいという注文が多いですね。

フレマル
(安達)

さきほどのお客様も聞いてましたが、『子持ち』とはどんな食材ですか?

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中に粒々の子が入っているイカです。ちょっとかわいいサイズで、煮つけたりするとおいしいんですよ。料理屋さんも真っ先に購入しますね。

フレマル
(安達)

そうなんですね!はじめて耳にする食材が多いです。

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魚だけではなく小木のみかんは、甘いという声を聞きます。”ゆら”という品種があって、この品種はやわらかいし甘いと評判です。でも、やっぱり甘酸っぱい佐渡みかんがいい、という男性もいらっしゃいます。

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(安達)

どちらも食べてみたいです!レモンも個人的に仕入れたいくらい…

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レモンは11月の中ぐらいから出てきます。1個100円ほどで販売する予定ですね。

跡継ぎがいないという悩み

フレマル
(安達)

このお仕事の前は、どんなお仕事をなさっていたんでしょうか。

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タバコ農家でしたが、腰を痛めてしまって辞めました。タバコ農家も多い時には110件ほどの生産者がいましたが、後継者がいない、若い人がいないと減っていきました。

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(安達)

そうなんですね。小木地区でも農業を継がない、跡継ぎがいないという話は多いのでしょうか?

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そうですね。でも、地元に残った若い人が定年する年齢になってから、家業である農家を手伝ってくれるようになった、というお宅もあると聞きます。あと、田畑の面積は全体的に少なくなっていってますね。

フレマル
(安達)

手広くやるんじゃなくて自分たちができる範囲になってきた、ということですね。先ほども判のりを作る方が減ってきたという話もありましたし、後継者問題は小木地区だけではなく日本全体の今後の課題でもありますね・・・。

佐渡小木地区で採れる食材は、小木の人々の暮らしの知恵が生かされている

佐渡の小木地区ならではの食材が集まる「小木特産品開発センター」。
先人の知恵と努力により、工夫されてきた水源の確保や食材保存の知恵が生かされ、
家族を想う気持ちから、「安心安全」と「美味しさ」にこだわる、小木の方々が育てた野菜や果物、海の幸をフレマルを通じてぜひお試しください。
フレマルが魅力いっぱいの佐渡の食材を日本全国へ発送する一助を担えればと願っております。

小木特産品開発センター

【生産者情報】
〒952-0604 佐渡市小木町1949-1
Tel :0259-86-2587

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