アムール 後藤祐輔シェフ「作っている方の顔が見えて初めて食材やお料理に愛着がわく、日本人が日本で作るフランス料理というのがテーマです。」
東京のど真ん中、広尾の住宅街にたたずむ、一軒家のフレンチレストランAMOUR(アムール)。 四季折々の日本の食材とフレンチの技と巧みが一皿ごとに花を咲かせ、人々を魅了する。日本人ならではの感性と、日本の素材にこだわった新しいスタイルのフレンチが各方面から注目を集める後藤祐輔シェフに、お話を伺いました。
日本人が日本で作るフランス料理
(安達)
アムールさんのコンセプトや、どんな想いでこのお店をつくったのかなど教えていただけますか?
シェフ
コンセプトとしては、フランス料理専門でやっているんですが、フランス料理だけど日本で料理を作っていく意味というか意義を表したいなと思っています。食材は日本の食材中心で、今は9割以上メイドインジャパンの食材を使っています。調理方法に関しても、絶対フランスで学んだものを全てやらなければいけないというわけではなくて、和食の技法やお寿司屋さんの考え方などを柔軟に取り入れて、日本人が日本で作るフランス料理というのをテーマに掲げてやってます。
(安達)
日本の食材を非常に多く取り入れているということですが、日本の食材ならではの魅力や、輸入食材との違いはどんなところなのでしょうか?
シェフ
メリットデメリット色々あると思うんですけど、日本の食材って僕らも生まれた時から食べ慣れているせいか、すーっと体に馴染んでくる、入りやすいんですね。
あとは、とても繊細で、香りや味わいが本当に日本の人たちに合っているな、と思っています。僕も好んですごく使っています。
東京のど真ん中で、濃い緑あふれる小旅行に行ったような気持ちになれるお店
(安達)
アムールさんは、都会の中にこうして一軒家があって、お店の窓から緑が見えて、すごく素敵な空間ですね。
シェフ
ここの物件を選んだ理由というのも、一つは庭、エントランスのお店に入るまでのアプローチがすごく素敵だったのが僕も気に入って。なかなか東京のど真ん中恵比寿で一歩入ったところに、濃い緑あふれるちょっと小旅行に行ったような気持ちになれるお店が少ないなと思ったので、一目惚れしてここに決めました。
(安達)
非日常みたいなものを感じることができて、しかもお店の中が、最近よくあるような黒が基調のスタイリッシュなお店とは一線を画していて、白基調ですごく明るくて素敵な雰囲気だな、と思っていました。
シェフ
かっこよくてスタイリッシュなお店も素敵だなと思うんですけど、フランス料理をベースとしてやってきたものとしては、白いクロスであったり、白ってすごく綺麗な色ですし、またゼロから始まるような思いもあるので、そういうちょっとウブな気持ちとともに、というイメージで白基調にして仕上げていますね。
日本人にしか作れない、日本人が作るフランス料理
(安達)
後藤シェフがどのようにお料理に向き合っているのか、先ほどの日本の食材をお使いになっていることもそうだと思うんですが、信念などを教えていただけますか?
シェフ
先ほど言ったように、日本人が日本でしか作れない料理というのは常に考えながら作っています。
20年近くずっとフランス料理を学んでやってきましたけど、逆にフランス人が作る料理を僕らが真似してもしょうがないかなと思っています。
時代的にも世界共通というか世界中の人も食べに訪れますし、そういう人たちにも喜んでいただいて驚きや新しい発見があるような料理を作っていきたいなと思っています。日本人にしか作れない料理、日本人が作る料理ということをかなり意識しています。
作っている方の顔が見えると、より食材にもお料理にも愛着がわいてくる
(安達)
食材を選ぶときの基準などはありますか?
シェフ
もちろん味わいは一番こだわっています。
あとは、日本の食材にこだわる理由の一つとして、作っている生産者の方と直に話し合ったり連絡が取れるという点がすごく重要だと思ってます。
作っている方の顔が見えて初めて食材にも愛着がわいて、僕らも使わせていただいてお料理にも愛着がわきます。
どんな方がどういう思いで作っているのかなというのが分かるので、それを僕らはその生産者の思いを汲み取って調理してお客様に提供させていただいています。
(安達)
まさに私たちがやろうとしているフレマルは、生産者の方が自分の信念や思いを直接語ることができて、それをシェフの方に見ていただいて伝えることができるサービスなんです。
シェフ
輸入の食材だと何処の誰が作ってどうしてるかもわからない、そういう不安な部分があります。
日本の国産の食材を使うにおいては、すごく意義があることかなと思います。
(安達)
実際に後藤シェフは今まで全国のいろいろな生産者の方のところへ足を運んで、農家の方と触れ合っていると伺っています。
シェフ
はい。今はちょっと難しいんですけど、今までは毎月、日本中の気になる生産者の方がいれば、そこを尋ねて実際にお話しさせて頂いて、食べさせて頂いて、という行動はしていましたね。
(安達)
なるほど!やはり生産者さんの顔が見えるというのは、食材を選ぶにあたり大事なポイントなんですね。
料理が変わればペアリングも必然的に変わる
(安達)
後藤シェフはお酒も好きだと伺っています。
私も先日アムールさんのお料理をペアリングコースで頂いたんですが、お酒の選び方が絶妙だなと思いました。後藤さん自身も直接お酒を選んでいらっしゃるんですか?
シェフ
そうですね。僕も一緒に混ぜてもらいながら、ソムリエとアドバイスをいろいろ頂きながら選んでいます。うちのお店は2ヶ月おきに料理コースが変わるんですけども、毎回しっかりと打ち合わせして調整してお客様に出すような形です。ですので料理が変わればペアリングも必然的に変えていっています。
(安達)
ペアリングするお酒を選ぶ際は、事前に調べたり、サンプルを集めてテイスティングされたりするんでしょうか。
シェフ
ある程度僕がメニューのたたき台を作って、そこにいくつか候補を挙げてもらって実際に合わせてみて、「ああでもない、こうでもない」と言いながら組み立てていく形ですね。
生産者と継続的に連絡を取れるツールは今まで無かった
(安達)
食材に関して生産者の方と繋がられているということですが、他のシェフの方にお話を聞くと、「この食材いいな、この生産者の方すごくいいな」と思って一旦取引が始まっても、そこから先に継続的に安定して取引が繋がるかというと、必ずしもそうではないことがあった、なんておっしゃっていました。
後藤シェフのこれまでの生産者さんとの取引の中での、良いことや悪いことも含めてご経験を教えていただけますか?
シェフ
僕も同じような経験はあります。僕は量の安定はそこまで求めていなくて、単発でも一回きりでもすごく良いものであれば使いたいですし、そういうものでもいいんですけど、その後の連絡手段が絶ってしまうと、思い出せないというか・・・
(安達)
たくさんいろんな食材を使ってらっしゃるので、たくさんの生産者さんと繋がろうとすると、なかには年1回だと忘れてしまうこともありますよね…
シェフ
一年経った後に思い出せればまた使いたいんですけど、僕も常に新しい食材を探しているので、連絡が途絶えたりしてしまって違う良いものが入ってしまうと忘れてしまうことがあります。なるべく継続的なお付き合いを望んでいるんですが、継続的に連絡を取れるツールは今まで無かったので。
(安達)
たくさんの生産者さんと連絡を取り続けるというのは大変ですよね。
シェフ
例えば、本当に良いトマトがあって、ここのトマト良いと思っていても、次の年になったらまた違うトマトの生産者を紹介されたり見つけたりしてしまうと、忘れて新しい方にいってしまったり、ということが多いです。ある時ふと思い出して、そういえば去年あれ使ってたなとか、あればいいんですけどね。
生産者の思いをそのままお皿に乗せたい
(安達)
シェフにとって農家さん、漁師さんや畜産関係の方ってどういう存在でしょうか。
シェフ
一番大切ですよね、料理を作る上で。僕にとっては食材が一番というか、食材ありきなので。いい食材、素晴らしい食材があって初めてお客様にお出しできる料理が作れるわけであって、なんでもないって言ったらちょっと失礼ですけど、あんまり面白くない食材だと、たぶん料理も全く面白くない料理になってしまうと思います。
なので、僕は食材、食材=生産者さん、結局人なので、人が作っているものは人でしか表現できないものだと思っています。そういう人達とお話すると、どんどんインスピレーションが湧くと言うか、その人たちの思いをそのままお皿に乗せたくなってくるんです。そういう場面、シーンや会話がないと、餌を与えられない魚みたいになってしまいます。
(安達)
新しいトマトなんだけど栽培方法がちょっと違ったり、形や味が違ったり、「こういうトマトあるんだ!」みたいな、そういう食材に出会ったとしたらどうでしょうか。
シェフ
そういうときは一番うれしいです。新しい食材、目新しいとかじゃなくて、おっしゃったように、同じ今まで見てたトマトでも、「何このトマト!」って。味わいだったり香りだったり、そこは何でもありなんですけど、驚きがある食材に出会った時はめちゃくちゃ興奮します。テンション上がりますね。そこからインスピレーションが生まれたり新しい料理や、こんな酸っぱいトマトだったらちょっとこうしたいなとかいうふうな料理が生まれてくるので。
逆にそういうの出会いがずっとないと、日々同じように過ごしていると飽きてきます。何かないかなっていう。食材がないと何も生まれないです。だからこの1年どこにも行けてなくて頭が活性化されないので、料理の新作もできないですね。
(安達)
素晴らしい食材や生産者さんとの出会いはシェフにとってとても大事なものなんですね。
お客様に、シェフが実際に生産者さんとお会いになったときのエピソードなどをお話しすると、お客様の反応はどうですか。
シェフ
全然違いますよね。もちろん。
僕もなるべく出来る限り、新しい食材が入ればスタッフに「これはこういう方が作っているよ」など生産者さんのことを説明しています。サービスのスタッフにはそれをお客様に伝えるようにと話をしてます。
事務処理の課題、取引先によって異なる発注方法
(安達)
この前お打ち合わせで伺ったときに、シェフ自ら伝票の処理をしていましたが、ああいう作業は結構大変ですよね。
シェフ
事務作業なので、仕方ないと言えば仕方ないんですが。業務の一部として時間を取られているので楽ではないですね。
(安達)
生産者さんやお取引先によって発注方法が違うのでしょうか?
シェフ
発注方法が違うことで煩わしさを感じているので、もう少し統一できたら嬉しいなという個人的な思いはあります。
(安達)
いろいろな飲食店さん、それぞれのパターンがあると思うんですが、オーナーさんやシェフの方が伝票処理や発注などを管理されているお店って結構あるのでしょうか。
シェフ
個人店は皆そうだと思いますね。
(安達)
なるほど。フレマルでは、仕入れ方法や支払いを一元化できるので、シェフの皆さんの業務改善につながるのではないかな…と思っているんです。
新しいものと出会った時に、いろんなイメージが湧いてくる。
どんなものがあるって言う情報が欲しいですね。
(安達)
食材やお酒もそうなんですが、フレマルには、食器・カトラリーや、調理道具などの道具をリースでご利用いただけたり、一時的にレンタルできるサービスがあります。私たちは燕三条という地域発なので、燕三条の道具も揃えていこうと思っています。
こんな道具使ってみたい、こんなもの使ってみたい、などイメージされているもはありますか。
シェフ
道具も食材もそうなんですけれども、何かこんなものを使いたい、というよりは情報が欲しいです。「こんなものがあります」とか、「こういうもの扱ってますよ」などの情報があれば、興味があるものだと僕は飛びついてすぐに買ってしまいます。情報がないと何も始まらないですよね。何か欲しいなと思ってるものは、自分の今の頭の中にある既存のものでしかないので、先に進めないんです。新しいものと出会った時に、初めてそれを使いこなしたりして、道具であればまた新しい料理が生まれたり、いろんなイメージが湧いてくると思うので。まずはどんなものがあるかっていう情報が欲しいですね。
(安達)
情報を探しに行くって、お忙しいとなかなか探しに行く時間がないと思うんですよね。届く情報の中に自分にとって有益な情報があれば、それが知りたいということですね。
シェフ
あとは自分で探しに行くとなると、道具でもお皿でも食材でもそれだけになってしまいますよね。道具が欲しければ道具屋さんに行って道具を見る、お皿が欲しければお皿屋さん、食材だったら食材って。これらをどこかで一括してもらえるのはすごいありがたいというか嬉しいですよね。
お店に来られない方へネットショップで販売
(安達)
アムールさんではネットショップを運営していますよね。一般のお客様に向けて焼き菓子とか。
ネットショップはコロナウイルスが出てからはじめられたんですか。
シェフ
正確に言うと、焼き菓子に関してはコロナの前から始めてたのですが、コロナになってからもっとECサイトの品数を増やして、今では煮込みのお料理だったり、そういうものも販売しています。
(安達)
ネットショップからは結構注文があるんでしょうか。
シェフ
そうですね、ちょこちょこは。ただ僕らも全部お店で手作りなので、大量生産はできないんです。こういう時なのでお店に来られない方や、常連の方でもご年配の方で、行きたいけど今は控えてる方などに買っていただいています。
(安達)
ネットショップって、ファンが多くいるお店じゃないとなかなかうまくいかない場合もあると思うんですが、さすがだなと思いました。
産地が近くなって最短で食材を料理できる、これからの時代にあった料理人の生き方なのかな
(安達)
フレマルが始まったら、初めましての人とアプリ上で会話してみたいとか、そういうわくわく感みたいなのはありますか。
シェフ
ありますね。こういう時だからこそ、そういう場がある、できるっていうのはすごく良いことだと思います。逆に言ったら、別にここ東京にいなくても日本全国とつながることができますね。リアルタイムで「今日の朝採れました」とか、先ほど言ったように、単発かもしれないけどちょっと一回だけ、「これ今日だけこれあるんだよ」っていう情報もすごい楽しみです。
(安達)
産地が近くなった気分でしょうか。
シェフ
産地が近くなって、それを直に次の日とかには手にできる、料理できるっていうのは、すごく新しいというか、これからの時代にあったこれからの料理人の生き方なのかなというふうに思います。
(安達)
東京ってなんでも食材が手に入ると思うんですけど、産地から直送で最短で食材が手に入るということに、どんな価値を感じていますか。
シェフ
無限大でしょうね。逆に言ったら僕は今東京でこうやってますけど、これが東京じゃなくても同じような体験というか、同じようなことができるのかな、というのも思いますよね。北海道にいても九州の素晴らしい魚介類があったら、1~2日で使えたり、リアルタイムで入るのかな。日本全国どこにいても同じような仕組みを作れるというのは素晴らしいことかなと思います。東京にいる意味もないのかなっていうふうにも思ってきますよね、今後は。
フレマルで、今まで知らなかった素晴らしい食材や道具に出会いたい
(安達)
最後に、農家さんや漁師さんなど、生産者さんへのメッセージと、フレマルに期待することがあればぜひ教えていただけますか。
シェフ
生産者さんたちは、お野菜も魚介も何でもそうなんですが、日本でものづくりされてる方って素敵な方がたくさんいらっしゃるんですけど、僕らもなかなかそういう方たちとの出会いがないんです。出会いたいですけども出会いがないので、そういう場をフレマルさんにつないでいただけたら、僕らももっともっと今まで知らなかった素晴らしい食材や道具を見つけることができると思います。もっと日本を知りたいという思いもあるので、自信を持って「私が作ってるトマト食べてくれ」って言ってくれる生産者の方がいらっしゃったら、是非教えていただきたいです。
(安達)
フレマルを通じて、ぜひそういう魅力的な生産者さんと出会っていただきたいと思っています。
シェフ
フレマルさんには、先ほど言ったように、僕らも忙しかったりコロナ禍で外に出れない、産地に出向くこともできないので、SNSなどの近代的なものを使って、僕らと生産者さんをつなげていただけるとすごい嬉しく思います。
結構アナログの世界なんです、料理業界って未だにものすごく。ちょっとずつ時代にあった取り組み方に変えていきたいなと思っているので、是非ご協力いただければと思います。
産地から直送・最短で食材が手に入る価値は「無限大」。お話から、生産者や食材をとても大切にし、愛情を注いでいることが伝わってきました。フレマルを通じて、全国のたくさんの生産者の魅力に触れ、アムールさんのお料理に彩りを添えて頂けたらと思います。生産者もモチベーションが湧いてくる…後藤シェフとの会話は、そんな素敵な時間でした。
AMOUR(アムール)
後藤祐輔シェフ
【お店情報】
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-6-13
Tel :03-3409-1331
HP :https://www.amourtokyojapan.com/
フレマルの生産者様はログインの上、プロフィールをご覧ください!
https://fremar.jp/users/shop_restaurants/3043152694